膝関節の痛み

膝の痛みは腰痛に次いで罹患率の高いからだの痛みと言われています。昨今のスポーツブームおよび健康志向の到来で運動年齢人口は増加の一途をたどっていますが、不十分な体づくりや急激な運動開始により怪我をしてしまうことも少なくありません。身体の故障には早期の適切な診断と初期対応が大切です。また、同じ怪我を繰り返さないためには長期的な視野でのリハビリテーションが不可欠です。当院では膝に関する痛みに対して診察や精密検査をおこない必要となれば手術治療を専門的におこなっています。特にスポーツ疾患では関節鏡(かんせつきょう)という内視鏡を用いて小さなきずで手術を可能にしており、下記の疾患に対応しています。

膝半月板損傷(ひざはんげつばんそんしょう)

膝をひねって痛みが続く場合には半月板を損傷していることがあります。半月板は膝のクッションの役割をしている軟骨の一種で損傷すると元には戻りません。放置すると周りの軟骨もいためることがあり、加齢の変化を進行させます。損傷のタイプによっては治療のために手術が必要です。当院の手術は関節鏡を使用し、半月板の破片を取り除いたり断裂部を縫合したりして機能の改善をはかります。縫合手術後、施設によっては1ヶ月間の固定や安静が必要ですが、当院では手術翌日より荷重歩行ができる手術をおこなっています。

断裂の関節鏡手術 断裂像

(断裂像)

断裂の関節鏡手術 縫合後

(縫合後)

半月板断裂の関節鏡手術

前/後十字靭帯損傷(ぜん/こうじゅうじじんたいそんしょう)

ボールなどのジャンプで足の着地の際、膝が内に入ると膝の中央にある前十字靭帯を損傷することがあります。またラグビーなどのタックルで膝が強く押されると後十字靭帯を損傷することがあります。これら十字靭帯は断裂すると自然治癒は見込めず膝の不安定性が生じるために手術が必要です。手術前からリハビリテーションを開始し、膝の可動域(曲げ伸ばしの角度)を回復させ、筋力訓練を行うことが重要です。


前十字靭帯再建の手術は当院では膝の前面の膝蓋腱を骨付きで採取し関節鏡を用いて膝関節内の解剖学的位置に移植し固定します。固定には金属でなく人工骨のねじを使用し、体に金属が残ったり将来ねじを抜去する2回目の手術をしなくてすむように工夫しています。また、後十字靭帯の再建にはハムストリングを移植腱に用いて再建します。入院期間はおよそ2週間で、松葉杖での歩行が可能となれば退院できます。但し術後も通院でのリハビリテーションが必要で、筋力強化訓練をおこないます。術後3カ月でジョギングを開始し、術後8カ月でスポーツ復帰できる見込みです。

移植し再建した前十字靭帯(中央)

移植し再建した前十字靭帯(中央)

膝軟骨損傷(ひざなんこつそんしょう)

膝の軟骨は長年の加齢変化により徐々にすり減っていきます。運動不足による筋力低下や体重増加により軟骨の摩耗は加速します。重度となれば人工関節を入れる手術が必要となりますが、早期であれば軟骨移植が可能で自分の骨と関節を維持することができます。またスポーツや運動による衝撃で軟骨をいためた場合や、骨壊死といって軟骨の土台となる骨がいたんだ場合も移植治療が可能です。軟骨損傷の手術治療には骨穿孔術といって穴をいくつかあけることで血流を促す方法もありますが修復されるのは不完全な線維軟骨にとどまります。そこで当院では骨軟骨移植術という完全な硝子軟骨での修復が可能な移植治療をおこない軟骨の再生を可能にしています。


関節鏡を用いて、または小切開を加えて膝の体重がかからない部分から骨と一緒に軟骨を円柱状に採取して、いたんだ軟骨部分に移植します。手術後は2~3週間の免荷(体重をかけないこと)が必要です。


O脚などの下肢の変形がある場合は軟骨を移植してもまた将来いたむことがあるため、その場合は骨切り手術(高位脛骨骨切り術)を同時におこないます。下肢をまっすぐに矯正することで軟骨への過度の負担を減らし軟骨損傷の再発を予防します。

膝の内側への骨軟骨移植のようす

膝の内側への骨軟骨移植のようす

高位脛骨骨切り術でO脚を矯正した下肢レントゲン写真(術前)

(術前)

高位脛骨骨切り術でO脚を矯正した下肢レントゲン写真(術後)

(術後)

高位脛骨骨切り術でO脚を矯正した下肢レントゲン写真


また、外傷に伴う軟骨損傷については自分の軟骨を培養して増やして体に戻す細胞培養軟骨移植が保険適応となっています。膝関節鏡検査で軟骨の欠損が確認された場合、体重のかからない部分から軟骨を0.4gだけ採取し、J-TEC社の協力のもと軟骨を培養します。4週間後に最大約15cm分の培養軟骨が完成し、手術で膝を切開して移植します。術後は4週間の免荷が必要で、両松葉杖歩行で過ごします。移植した軟骨が十分なかたさとなるには半年~1年かかります。詳細は再生医療ナビに掲載されています。

細胞培養軟骨移植

細胞培養軟骨移植

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)

膝の軟骨は先にも記載したとおり長年の加齢変化により徐々にすり減っていきます。関節のすきま=関節裂隙(かんせつれつげき)が徐々にせまくなり、大腿骨(太ももの骨)の端と脛骨(すねの骨)の端が直接接触するようになります。硬い骨同士が直接接触することにより、お互いを傷つけてしまい、炎症が誘発されることで疼痛が増悪します。また変形が進むことで膝の曲げ伸ばし=可動域(かどういき)の制限が出たりします。

① 疼痛のために歩行や日常生活動作に支障が出てしまい、

② 鎮痛薬やヒアルロン酸注射などの保存的加療で十分効果が出ず、

③ 上記の関節再建手術の適応以上に重度の変形が生じている患者さん

には関節を金属やポリエチレンなどの人工物で再建する人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)の適応となります。

人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)

膝の前面に膝を伸ばした状態で約10~15cm、膝を曲げた状態で約15~20cmの皮膚切開をし、膝蓋骨(お皿の骨)を外によけて関節を展開します。直接あたっている骨の端を大腿骨、脛骨ともに数mmから1cm程度切除して、金属の部品を医療用のセメントを用いて、骨に固定します。金属同士が当たらないようにするために間にはポリエチレンでできたヒンジのかわりになる部品を挿入しますので、術後も曲げたり伸ばしたりすることが可能です。体格や骨の硬さ、変形の程度にもよりますが、手術時間は1時間半~2時間程度、入院期間はもともとの体力や術後経過にもよりますが、通常2~3週間入院リハビリを行い杖での歩行が可能となれば退院いただき、外来でのリハビリを術後5ヶ月程度まで続けます。

一般的には下肢の構造上、内側の関節が痛むことが多いですが、外側が痛み変形している症例にも通常どおり手術を施行しました。

術前正面

(術前正面)

術後正面

(術後正面)

変形が強い症例に対してはステムと呼ばれる補強部品と本人から摘出した骨を加工して不足している部分を補う自家骨移植(じかこついしょく)を併用して手術することがあります。

術前正面

(術前正面)

術後正面

(術後正面)

内側のみ痛んでいる症例に対して内側のみを置換するインプラントもありますが、さらに年齢を重ねられ外側が痛んでしまった症例に対して内側置換→全置換へ再手術した症例もあり、基本的には全置換を行っています。

術前正面

(術前正面)

術後正面

(術後正面)

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