診療科の特色
リハビリテーションは、Re(再び)‐habilis(ふさわしい)‐ation(すること)のことです。疾患(外傷や一時的なものも含む)により起こった「生活上の困難、不自由、不利益=障害」を改善・軽減あるいは予防することによって、再びその人にふさわしい機能、能力、社会的・主観的存在の回復に貢献することを意味します。
従って対象となる疾患は
1)脳疾患(脳血管障害、脳外傷)
2)脊髄疾患(脊髄損傷)
3)小児疾患(脳性麻痺、発達障害)
4)神経および筋疾患(パーキンソン病、多発性硬化症)
5)骨関節疾患(関節リウマチ、骨折)
6)呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患、開心・開胸・開腹術後の呼吸抑制)
7)循環器疾患(心筋梗塞)
8)代謝疾患(肥満、糖尿病)
9)乳腺疾患(乳癌術後)
10)悪性疾患などの終末期や熱傷後
など広い範囲に渡ります。
リハビリテーションを必要とする全ての患者さんに、上質で高度なリハビリテーション医療を必要十分に提供してゆくことが、私達の使命です。
当科の基本方針は、「障害を持つ人」の院内および地域におけるノーマライゼーションを目的に、急性期病院におけるリハビリテーション科の役割をまっとうすることです。
具体的には、脳血管障害や骨折は発症超急性期のベッドサイドからスタートする。開心・開胸・開腹術には、術前から呼吸・排痰の指導・訓練や必要に応じて体力増強訓練を行い、術後は気管チューブ抜管直後から呼吸理学療法と離床訓練を開始して、合併症予防と運動耐容能改善を図る。整形外科の予定手術や乳腺手術も術前から関わり、手術翌日から積極的に機能訓練を開始し離床を進める等です。実際、このように発症早期からリハビリテーションを開始することで、術後合併症が減少し、在院日数が短縮して、患者さんにも喜ばれています。
一方、当院は地域密着型病院であるため、地域と連携を取りながら、地域の患者さんをサポートしてゆくことも、重要な課題と考えています。例えば、高齢の患者さんが肺炎などで入院された場合、日常生活活動性や知的発動性の低下を最小限に留めて、生活動作の早期獲得および早期退院を目的に、呼吸理学療法を併用しながら、生活動作訓練や趣味的アプローチによる心理支持を行い、心身両面からサポートします。
医療的に不安定である急性期のリハビリテーションでは、安全性の確認が何より重要で、特に高齢者や虚弱者においてそうです。リハビリテーションの開始時や必要時においては、血圧、脈拍、心電図、動脈血酸素分圧をモニターしながら、慎重に訓練を拡大しています。運動負荷量決定は医師の監視下で行うなどリスクに注意し、けっして無理強いや過剰負荷にならないよう、患者さん一人一人の体力や気力に応じた進行に留意しています。
リハビリテーションはチーム医療であり、関係する医療者間の情報の共有と目的の統一が大切です。当科では、リハビリ科医師やスタッフが各科の回診や術前検討会に参加する、毎週病棟との連絡会を行う等、日常診療における主治医や病棟との連携を重視する他に、全体的視野でリハビリテーション医療の問題を把握検討できるよう、月一回、看護科長達とのリハビリテーション実務者連絡会議や、各科診療科長によるリハビリテーション運営会議を行っています。
今後も、リハビリテーションを必要とする全ての人に、上質で高度なリハビリテーション医療を必要十分に提供してゆけるよう、院内さらには地域での継続的で均一なリハビリテーション診療圏の構築に、協力してゆきたいと思います。