各疾患の特色及び特殊診療

食道癌

食道癌の治療においては、外科だけではなく、消化器内科及び放射線科とも協議の上、それぞれの患者さんにとってどの様な治療の組み合わせが最も効果的で、 治療後の生活にも有利であるかを考えた、“集学的治療の実践”をおこなっております。
すなわち、術前、術後の化学療法及び放射線療法と、外科手術をどの様なパターンで組み合わせていくかを症例ごとに検討し、 患者さんの年齢、体力、腫瘍の進行度など、様々な要素を加味した上で、より質の高い治療を受けていただけるよう、各科と連携をとり治療を進めております。又、手術は原則として鏡視下手術(腹臥位)で行っています。

胃癌

内視鏡的切除と外科手術が主体で、術後再発予防や切除が困難な時に、抗がん剤を用いた化学療法を行います。 病気の時期に応じて、内視鏡的切除か外科的切除をすべきか、常に内科と外科が緊密にコンタクトを取りつつ最善の治療を目指しています。
基本的には、癌が胃壁の粘膜内にとどまる2cm以下の分化型胃癌であれば、リンパ節に転移することはほとんどないので内視鏡下に切除します。
他の場合は、胃切除を基本とし、術前及び術後の化学療法を積極的に施行しています。手術は腹腔鏡手術も積極的に取り入れ、患者さんの負担軽減に努めています。胃癌手術における腹腔鏡手術率は95%を超えております。
当科での手術後の成績は(5年生存率)、Stage Ia, Ib, II, IIIa, IIIb, IV 別に100, 93.3, 65.4, 54.8, 37.0, 9.0%です。

大腸癌

大腸癌は、基本的には切除が適切であれば、他の消化器悪性疾患に比べると予後の改善が期待できる病気であり、肝転移・肺転移に対しても、切除することで多くの患者さんが長期にわたって生存されています。
癌が粘膜内だけに限局していれば内視鏡的切除で根治が期待できますが、粘膜下深くまで進行している場合は、外科切除とリンパ郭清が必要になります。手術に関しては、積極的に腹腔鏡下手術を施行する方針です。術後の化学療法及び放射線治療も積極的に施行しております。大腸癌手術における腹腔鏡手術率は約85%です。
当科での手術後の成績は(5年生存率)、Stage 0, I, II, IIIa, IIIb, IV 別に100, 95.5, 85.6, 84.7, 65.1, 17.3%です。

膵臓癌・胆道癌

膵臓や胆道の悪性腫瘍に対する膵切除や胆道再建の必要な手術を年間に約20件行っています。工夫を重ねて安全で合併症の少ない手術を行っており、例えば膵頭十二指腸切除術では、輸血が必要になることはほとんどありませんし、膵液瘻の発生率は10%未満、術後在院日数の中央値は22.5日です。当科での膵癌の術後の成績は、Stage 0,Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳa,Ⅳb,(取り扱い規約第6版)別に、1年無再発が100,67,50,58,49,26%、2年生存が100,100,67,58,50,42%で2年無再発、3年生存がなかなかえられないのが実情です。治療成績の向上を目指して、2014年より最新鋭の放射線治療施設を利用した集学的治療に取り組んでおり、一部の患者さんには手術前に放射線化学療法を受けていただいています。

肝癌

肝悪性腫瘍は原発性肝癌と転移性肝癌に分類されます。 原発性肝癌の内、肝細胞癌が95%以上を占め、B型及びC型肝炎、アルコール等が原因と考えられています。
治療として、
1)肝切除
2)局所療法(RFA;ラジオ波焼灼療法)
3)TACE;肝動脈化学塞栓療法
4)肝動脈動注化学療法
5)全身化学療法
6)肝移植
に大別されます。
当科においては、放射線科及び内科との連携を密にし、肝切除を中心とする上記の治療を積極的に施行しています。 転移性肝癌に関しては、肝切除の対象となる原疾患は限られ、主として大腸癌の肝転移です。当科では、大腸癌肝転移例においても、肝切除とともに、PMCT、RFA等の局所療法や、肝動脈動注化学療法を積極的に施行しており、 生存率の向上に努めています。また日本消化器外科学会との連携のもと腹腔鏡下肝切除の安全な遂行にも努めています。当院は日本肝胆膵外科学会認定の修練施設です。

化学療法

2012年に外科で化学療法を担当した患者さんは112人で、そのうち大腸癌の患者さんが97人でした。化学療法ののべ回数は1年で1,000回を超えます。2011年11月にリニューアルして快適になった外来化学療法室を利用して、複数の認定がん専門薬剤師、認定看護師と緊密に連携を取り、最新の治療に対応しつつ、安全に治療が継続できるよう努めています。当院の特色として、合併症の少ない上腕ポートを積極的に活用しており、年間約140件の上腕ポート挿入を施行し、患者さんの快適な治療継続に貢献しつつ、上腕ポートの挿入手技および管理法について学会ランチョン等で報告し、上腕ポートセンターとして情報発信に努めています。これらの多くの化学療法症例をもとに、大規模臨床試験を含め多数の臨床試験にも参加し、その結果日本癌治療学会、臨床腫瘍学会、ASCO-GI等で報告しております。

胆石症

胆石とは胆嚢内にできた結石のことです。症状としては少し重い感じがするだけの痛み、心窩部から右肋骨下、背中にかけての鈍い痛みや、 脂汗を流すようなお腹全体の痛みなど様々です。
胆石が胆嚢の出口につまった場合、強い痛みと熱発、急性胆嚢炎、黄疸を起こし、緊急手術や胆嚢ドレナージなどの処置が必要な場合があります。当科では胆石症に対して全例まず腹腔鏡下胆嚢摘出術を全身麻酔下に行います。術後の痛みは軽度で、美容的にも優れています。しかし胆嚢炎が強い場合この方法は困難なこともあり、術中開腹手術へ移行することもありますが、 いずれの場合も入院期間は1週間前後です。

ソケイヘルニア

股の付け根近くをソケイ部といいます。ソケイ部で筋肉や筋膜が突出してヘルニアのうと呼ばれる袋ができ、その中に腸などが脱出してきます。 症状としてソケイ部の膨隆のほかに、鈍痛や引きつれ感を伴うことがあります。
治療としては成人の場合、当科では全身麻酔下の腹腔鏡手術又は腰椎麻酔下に人工物による修復術で行っています。合成繊維のメッシュで筋膜の弱いところをおおい補強します。入院期間は数日から1週間前後です。御希望があれば翌日退院も可能です。
小児の場合は、全身麻酔下にヘルニア嚢を切除するだけ、補強は行いません(Potts法)。

肛門疾患

毎週火・木曜日にストーマ外来を開設しています。
ストーマ(人工肛門)の管理方法は装具も含め日進月歩の領域で、患者さんが現在行っているよりもさらに良い方法が見つかることもあります。本院で手術をうけられた患者さんだけでなく広くストーマに関する問題に対応します。本院にはWOC看護認定看護師が2名常駐しております。

ストーマ外来

毎週火・木曜日にストーマ外来を開設しています。
ストーマ(人工肛門)の管理方法は装具も含め日進月歩の領域で、患者さんが現在行っているよりもさらに良い方法が見つかることもあります。本院で手術をうけられた患者さんだけでなく広くストーマに関する問題に対応します。本院にはWOC看護認定看護師が2名常駐しております。

チーム医療

医師、薬剤師、看護師、リハビリテーションスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚療法士)、検査技師、栄養士、臨床工学技士、臨床心理士などがチームを構成して(栄養サポートチーム、感染コントロールチーム、緩和ケアチーム)、院内の全病棟、全診療科を対象に、横断的に活動しており、外科の患者さんも支えています。特にリハビリテーションには力を注いでおり、患者さんの身体的機能が維持され、早期回復するよう、週1回外科スタッフ、病棟スタッフ、リハビリテーションスタッフが揃ってミーティングを行っています。
診療科ページへ戻る