放射線被ばくについて

放射線被ばくについて

放射線は目で見ることもできず、その影響もわかりづらいため、どうしても不安や恐怖のイメージがついてしまいます。また、世界各地で起こった放射線関連の事故をご存知の方は「放射線被ばくは危険なもの」という認識をしてしまうのは当然のことかと思います。

医療分野で使用されている放射線を扱う検査や治療も、放射線による被ばくを避けることはできません。しかし放射線検査を行うことで病気や怪我を治療するために必要な情報を多く得ることができるといったメリットが存在し、医師が放射線被ばくによるデメリットよりも検査を受けて得られるメリットが大きいと判断されたときに実施されます。私たち診療放射線技師は、患者さんが受けるデメリットを最小限に抑え、そしてメリットを最大限に享受できるよう、医療に使用される放射線を法令やガイドラインに則り適切に管理することで、安心して検査を受けていただけるよう努めています。

放射線検査を受ける際、ご不明・ご不安な点がありましたら、遠慮なくスタッフにお尋ねください。

被ばくの種類について

被ばくについては次の3つの考え方が適応されます。1つ目は私たち医療従事者などが自らの仕事の結果受ける被ばくを「職業被ばく」、2つ目は患者さんが検査の際に受ける被ばくを「医療被ばく」、3つ目はこれら2つ以外の被ばくを「公衆被ばく」といいます。

またこの他にも、私たちは日常生活の中で自然と放射線を受け被ばくをしています。放射線はもともと自然界に存在するもので、原子力施設や病院など特別な場所にだけあるものではありません。宇宙からまた大地から受ける自然放射線や、食物や空気中のラドンなど、自然由来の放射性物質から受ける放射線は、合計すると日本平均では年間で2.1 mSv(ミリシーベルト)になります。



放射線被ばくには「外部被ばく」と「内部被ばく」という分類があります。体の外に放射性物質(放射線源)があって、そこから被ばくすることを「外部被ばく」、放射性物質が体の中に入り、体の中の放射線源から被ばくすることを「内部被ばく」といいます。

正当化と最適化について

患者さんの医療被ばくをともなう放射線検査には、「正当化」と「最適化」が必要です。放射線を使った検査は、放射線被ばくによるデメリットよりも、検査を受けて得られるメリットの方が大きいと判断されたときにのみ行われます。これを「正当化」と言います。医師には臨床経過において、この放射線検査(被ばくをともなう)の必要性を説明する義務があります。疑問のあるときは遠慮なく医師にお尋ねください。



そしてその放射線検査は、検査内容や患者さんの体格に合わせ、病気を見つけることができる画像(画質)の提供と、被ばく線量のバランスを十分に考慮した上で行われなければなりません。これを「最適化」と言います。この「最適化」の指標の1つに、診断参考レベル(DRL)といわれるものがあります。DRLとは、全国の医療被ばく線量実態調査に基づき決定された医療被ばくの標準的な線量のことを指します。各医療機関はこの推奨値と自施設との線量を比較し、大きく離れていれば線量を見直すことが求められています。当院もこのDRLを基に、患者さんに適切な放射線の量を設定し画像を提供しています。認定資格を有した放射線管理士が、「最適化」の検討を年1回以上行っておりますので安心して検査を受けていただければと思います。

被ばくをした時の人体への影響について
「確定的影響と確率的影響」

放射線を扱う検査では被ばくを避けることはできません。その放射線による人体への影響は、確定的影響と確率的影響の2種類に分けられます。

 確定的影響 

ある一定量(しきい線量)の放射線を受けたときに1%の人に症状が現れる影響のことを指します。このしきい線量以下の被ばくでは影響は現れません。症状の例としては皮膚障害や白内障、全身症状だとリンパ球減少や悪心・嘔吐などが挙げられます。不妊や胎児への影響、脱毛などもこちらに該当します。撮影方法や体格によって線量は増減しますが、通常の放射線検査ではこの確定的影響が起こることはありません。妊娠していた場合でも胎児への影響を心配する必要はありませんが、検査の前に医師に申し出て下さい。放射線治療やカテーテル検査など、患者さんの生命に関わるような治療・処置を行う場合は、線量が多くなることもあるため、確定的影響による症状が起こる可能性があります。

 確率的影響 

ある一定の放射線量を受けても必ず影響が現れるということではなく、被ばく線量の増加と共に発生する確率が増加することを指します。がんの発生や白血病などの身体的影響や遺伝的影響がこちらに該当します。過去の調査や研究から、線量とがんの発生の関連は100Sv以上で線量とともに発生リスクが上昇することが明らかになっていますが、それ以下の線量では被ばくによるがんの増加については科学的な根拠がなく、発生リスクは非常に小さいものであるとされています。たばこやお酒、肥満などの生活習慣に起因する発がんのリスクと比較しても、放射線被ばくによるがんの発生確率は少ないのです。通常の放射線検査では100Svを超えることはありません。過剰にがんのリスクを心配せずに必要な検査は適切に受けてください。





当院の主な放射線検査による被ばく量は以下の通りです。

100mSvを超える値はありません。下記以外もご提示することは可能です。ご希望の方はお申し出ください。CTでは診断参考レベル(DRL)よりも低い被ばく線量で画像を取得できるよう努めています。

よくある質問Q&A

Q1. 放射線と放射能とは?

A1. 放射線を出す力を持った物質のことを「放射性物質」、放射線を出す力のことを「放射能」といいます。


 放射線は、目に見ることができず、触れることもできず、においもなく、人間が五感で感じることはできません。だからこそ、不安に感じることもあるかもしれません。しかし放射線はもともと自然界に存在するものであり、私たちは日常生活の中でたえず色々なものから放射線を受けながら暮らしています。医療分野では人工的に作り出された放射線や放射性物質を有効に活用することで患者さまの健康を守る支援をしています。

Q2. 放射線被ばくは危険ですか?
A2. 日常生活で被ばくをしていない人はいません。どれほど被ばくしたかが重要です。
私たちは、ふだん知らず知らずのうちに身の回りにあるさまざまな放射線を受けて生活しています。放射線は、もともと自然界に存在するもので、原子力施設や病院など特別な場所にだけあるものではありません。
 宇宙から、そして大地から受ける自然放射線や、食物や空気中のラドンなど、自然由来の放射性物質から受ける放射線は、合計すると日本平均では年間で2.1 ミリシーベルトになります。(世界平均:年2.4 ミリシーベルト)「年シーベルト(単位:Sv/y)」とは、1年間当たりに受ける放射線量。○○Sv/yあるいは年○○シーベルト、というように表します。
 通常の検査で放射線被ばくは危険ではありません、必要な検査は適切に受けてください。

Q3. 被ばくした時の人体への影響は?
A3. 放射線被ばくには、脱毛や白内障、皮膚障害などが起こる「確定的影響」と、がんや白血病、遺伝的影響などが起こる「確率的影響」の2種類に分けられます。
 被ばくした量によって影響や発生確率が異なってきます。詳しくは、被ばくをした時の人体への影響について「確定的影響と確率的影響」をご覧ください。

Q4.検査でどれくらい被ばくしますか?
A4.検査の種類や体格により異なりますが、例をあげますと、当院では胸部レントゲンで0.02mSv、頭部CTでは1.92mSv程度の被ばくがあります。
 通常の検査ではがんの発生する確率が増える100mSvを超えることはありません。放射線治療やカテーテル検査など患者さまの生命に関わるような治療・処置を行う場合は線量が多くなることもあるため確定的影響による症状が起こる可能性があります。

Q5. 何回もCTなどの検査を受けて大丈夫ですか?
A5. 過剰に病気やがんのリスクを心配せずに必要な検査は適切に受けてください。
放射線によって細胞にダメージが与えられても、通常であれば数時間から数日の間に修復されます。短期間で多くの被ばくをする検査を行うと、検出できないほどの小さながんのリスクであったとしても、そのリスクが上がってしまうことは否定できません。
 しかし、検査を受けないことによって病気や怪我の発見の遅れといった別のリスクが発生してしまい、適切な医療を提供できなくなる可能性があります。医師は放射線のリスクよりも放射線検査で得られる便益(ベネフィット)が上回ることを判断して検査依頼をしています。被ばくのリスクよりも検査の必要性を重要視していただければと思います。

Q6. 子どもが放射線検査を受けても大丈夫ですか?
A6. 細胞分裂が盛んな細胞ほど放射線による感受性が高いため、成長過程にある子どもの方が大人より放射線の影響を受けてしまいます。しかし通常の検査では大人と同様、影響が起こることはありません。
 お子さんを撮影する際は、小児や乳児用の適切な撮影条件で撮影を行っておりますので、安心して検査を受けてください。ご不明な点や検査に対して不安な点がありましたら、医師や診療放射線技師までお申し出下さい。

Q7. 将来子どもができたときに影響はありますか?
A7. ヒトでは、本人が被ばくをしても将来の子どもに影響が遺伝することは確認されていません。原爆被爆者二世の健康影響調査でも、影響は認められていません。


Q8.妊娠中に放射線検査してはいけませんか?
A8. 放射線被ばくによるデメリットより検査を受けて得られるメリットが大きいと判断された場合は妊娠中でも検査をしていただけます。
 生殖腺に100mGy以下の胎児の被ばく線量では、胎児への放射線の影響は心配する必要はないとされています。通常の検査では被ばくによって胎児に影響が起こることはありません。(胸部のレントゲンで約0.0001mGy、腹部のレントゲンで約0.4mGy、腹部のCTで約10mGy)
 検査時はなるべく胎児に放射線が当たらないように工夫して撮影しております。妊娠している際はその旨を医師、診療放射線技師にお伝えください。ご不明な点や検査に対して不安な点がありましたら医師や診療放射線技師までお申し出下さい。

Q9. MRIで被ばくしますか
A9. MRIは放射線を使わない検査ですので、被ばくはしません。

Q10. CTの造影剤で被ばくは増えますか
A10. CTの造影剤はヨードを使用していますが、それにより被ばくが増えることはありません。

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