消化器センター・外科

肝臓癌に対する腹腔鏡手術のお話し

2022/09/01

肝臓癌には原発性と転移性(多くは大腸癌)の二種類があり難治癌と言われていますが、抗癌剤治療の進歩はめざましく治療成績は向上しています。しかし、根治を目指すためには手術と組み合わせた集学的治療が必要です。

これまでの肝臓癌手術

肝臓は肋骨に囲まれた体の深い部位に位置し、太い血管と接しているため手術の難易度が高いと考えられ、安全に手術を行うためには大きな傷は仕方がないと多くの外科医が考えていました。当時は”Big surgeon、Big incision”といって、名医ほど傷が大きいと言われていたぐらいです。

傷の小さな腹腔鏡手術の時代へ

消化器癌の手術は傷の小さな腹腔鏡手術の時代となり、肝臓癌も2010年に小範囲肝切除が2016年に広範囲肝切除が保険適用となりました。小さな傷で筋肉を切らないため、入院及び仕事復帰までの期間が短縮されました。加えて外科医が同じ画面を見て安全性が高い、手術後の癒着が少ないなどの多くのメリットが報告されています。
肝臓癌手術が腹腔鏡で行えるようになった背景には、医療機器の進歩に加えて肝臓の解剖に関する知識の集積が大きいと言われています。

根治を目指した肝臓癌治療

難治癌である肝臓癌治療においても、抗癌剤と手術を組み合わせた集学的治療を行うことで根治に至る患者さんが増加しています。体の負担が大きい手術後に抗癌剤治療を行うため、手術後になかなか抗癌剤が開始できない患者さんや、開始できても途中で続けられなくなる患者さんも一定数認めています。当科では傷の小さな腹腔鏡手術を安全に行うことで、すべての患者さんに予定した集学的治療を受けていただき根治を目指していただきたいと考えており、今年の4月に保険適応となったロボット肝切除も導入予定です。また、治療の内容・スケジュールに関しては消化器内科、腫瘍内科、放射線科との合同カンファレンスで一人一人の患者さんに寄り添う形で決定しているのも当院の特徴です。

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