心臓血管外科
大動脈瘤について
2022/08/01
全身に血液を送る大動脈は体の中で最も太い血管です。動脈硬化などで血管壁が弱くなると、大動脈の内側からは高い圧力(血圧)がかかっているため、血管が”瘤(こぶ)状”に膨らんできます。これを大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)と言います。瘤は大動脈のどの部位にでも起こり得ます。
大動脈瘤はほどんどの場合、無症状であり、他疾患の診断のためにレントゲンやCT、腹部超音波などで偶然発見されることがほとんどです。一旦拡大した瘤は自然に小さくなることはなく、時間と共に大きくなっていきます。大きくなった動脈瘤は破裂する危険性があります。破裂すると激烈な痛みが出現し、大出血による意識障害などを起こし突然死に至ります。破裂時の死亡率は80〜90%にも上るといわれ、大動脈瘤は破裂する前に治療する必要があります。
瘤化した大動脈を小さくする特効薬はなく、治療の原則は瘤を大きくしないように管理することです。すなわち、動脈硬化の危険因子である高血圧や高脂血症、糖尿病の改善や、禁煙などが必要です。特に高齢者に多い高血圧と、長い期間の喫煙習慣は動脈瘤のリスクを増大させます。大動脈瘤が一定の大きさを超えてくると破裂する危険性が高まるため、手術が必要となります。
手術法として胸部あるいは腹部を切開して動脈瘤を切除し、人工血管を縫い付ける手術(人工血管置換術)を行うのが一般的ですが、切開範囲が大きいため術後の体力回復に時間がかかります。それに代わる手段として「ステントグラフト内挿術」があります。ステントグラフトとは人工血管にステントと言われるバネ状の金属を取り付けた人工血管で、脚の付け根を小切開して動脈内にカテーテルを挿入し、動脈瘤のある部位まで運びステントグラフとを展開します。動脈瘤は切除されず残りますが、ステントグラフトにより蓋をされることで血流がなくなり、次第に小さくなる傾向が見られます。小切開のため体力回復が早いのが特徴です。当院では瘤のある部位や形態、また身体状態などを確認したうえで、納得できる治療法を提供することを心がけています。ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。