救急科

コロナ流行下での心肺蘇生

2021/09/01

コロナ流行下での心肺蘇生

今月は9月9日「救急の日」がある月ですので、身近にある救急に関わる最新情報についてご紹介します。
今年7月に救急現場における蘇生ガイドラインが日本蘇生協議会(JRC)より6年ぶりに改訂出版されました。その中でコロナ流行下における市民による一次救命処置の要点が記載されています。基本的な考え方として、新型コロナウイルス感染症が流行している状況においては、全ての心停止傷病者に感染の疑いがあるものとして対応する必要があります。以下に要点を解説します。

1.日常からの感染防護


急変対応の時に咄嗟に動けるように普段からマスクを装着しておく



2.反応の確認と通報


周囲の安全を確認した上で、傷病者の肩を叩きながら大声で呼びかける。応答や目的のある仕草が無ければ、119番通報をする。携帯電話のハンズフリー(スピーカー)モードを活用することも考慮する。近くにAEDがあれば、周囲の人に持ってきてもらう。


3.呼吸の確認


感染対策の観点から、患者の顔にあまり近づき過ぎないようにして、呼吸の確認を行う。呼吸が停止している場合だけでなく、普段通りの呼吸をしていなければ、心停止として対応する。判断に迷うときも心停止と考えて行動する。



4.エアロゾル飛散の防止


心肺蘇生時のエアロゾル飛散の防止のために、マスク・ハンカチ・タオル・衣服などで傷病者の鼻と口を覆う。



5.胸骨圧迫(と人工呼吸)


1分間に100〜120回のペースで、強く絶え間なく胸骨下半分の圧迫を行う。コロナ流行下では成人には人工呼吸は行わない。子供は溺水や窒息などの呼吸障害が原因になることも多く、講習を受けて人工呼吸の技術を身につけていて、人工呼吸を行う意思がある場合には、人工呼吸も実施する。



6.AEDによる電気ショック


AEDが到着したら、AEDの指示に従い、適応があれば電気ショックを行う。


7.引き継ぎ後の衛生


救急隊に引き継いだら、速やかに石鹸と流水で手と顔を十分に洗う。傷病者の鼻と口にかぶせたハンカチやタオルなどは、直接触れないようにして廃棄する。


感染対策を意識した救命処置について解説しました。少しでも皆様の役に立てれば幸いです。


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