小児科

小児の冬の感染症

2021/02/01

小児の冬の感染症

この1年は新型コロナウイルス対策としてこれまでになく感染予防が徹底されたため、子どもの感染症が激減しました。マスクや手洗いができない乳幼児の感染症までもが姿を消したのですから、子ども同士で伝播していると思われた感染症も実は大人が媒介していた、ということでしょうか。RSウイルスもインフルエンザもない稀な冬になりそうですが、ウイルスはそう簡単には消えてくれません。コロナと違って乳幼児が重症化しやすい、冬によくみられる感染症をおさらいしておきましょう。

 

★RSウイルス感染症

 流行期は秋から冬の初めですが、実は一年中感染がみられ、生後1か月でも感染します。透明の鼻汁から始まり咳が出て、初めは普通の風邪と大差ないのですが3〜4日でみるみる咳や喘鳴が強くなり(細気管支炎の症状)、飲めない、眠れない、吐くといった状態になります。月齢が小さいほど重症化しやすく、熱が高くなくても呼吸困難で入院になる子が多いです。赤ちゃんの場合たいていは家族からの感染ですが、年長児や大人では咳の出る風邪程度で済んでしまうので気づきにくいのです。鼻腔ぬぐい液で診断しますが、ワクチンや治療薬はなく、対症療法のみとなります。

 

★感染性胃腸炎 ~ロタウイルス、ノロウイルス

 流行期は冬から春先、ノロウイルスは成人も同様に発症しますが、ロタウイルスは乳幼児に多く重症化しやすいです。どちらも嘔吐で始まり発症時はよく似ていますが、ロタウイルスは嘔吐がおさまった後も経口摂取がすすまず頻回の水様下痢が長く続きます。ウイルスは便中に排泄され(長い例では2週間程度)経口感染しますが、注意したいのはノロウイルスが吐物からも感染することです。ノロウイルスは乾燥に強くアルコール消毒にも抵抗するので、吐物処理を誤ると家族全員に感染が広がります。次亜塩素酸や熱で不活化されるので確実な処理を心がけましょう。診断は便検査で行いますので、受診時には便のついたおむつをビニール袋に入れてしっかり口を縛って持ってきてください。ロタウイルスでは便の色が薄いことや、酸っぱい臭いがすることに気づかれるかもしれません。治療は対症療法のみですが、2020年10月からロタウイルスワクチンが定期接種化されたので、今後重症患者さんは減っていくでしょう。

 

小さいお子さんは症状の進行がはやく、1日の受診の遅れが危険を招くこともあります。

いつもと違うと感じたら、躊躇なく受診行動をとっていただきたいものです。

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