呼吸器内科

冬の呼吸器感染症

2019/12/01

冬の呼吸器感染症

冬には、気温が低くなり空気が乾燥し、気管支やのどの粘膜がデリケートになり、ウイルスや細菌などによるかぜ症候群(いわゆる“かぜ”のことです)、インフルエンザ、気管支炎、肺炎といった呼吸器系の感染症が増加します。またこれらによって、元々ある喘息やCOPD、間質性肺炎といった慢性的な呼吸器疾患が急に悪くなること(急性増悪と言います)も増加します。

 

ここで代表的な3つの疾患をご紹介します。

 

・かぜ症候群

 急性の上気道の炎症の総称で、症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、痰などの呼吸器症状が主ですが、発熱、食欲低下、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛などもよく見られ、時に吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状を伴う場合もあります。ウイルスが主な病原体で、ウイルスには抗菌剤は無効なので、治療は安静や対症療法(症状を抑えることを目的とする治療)が中心となります。多くは1週間程で症状はほぼ消失しますが、咳がかなり長引くことがあります。また、抵抗力の落ちた状態の患者ではかぜ症候群をきっかけに全身状態が悪化する危険性がありえます。

 

・インフルエンザ

 インフルエンザウイルスが原因であり、症状はかぜ症候群と同様ですが、高熱や関節痛などの全身症状をきたすことが多く、高齢者や基礎疾患のある患者では重症化することがあります。治療としては、安静、対症療法以外に、発症後48時間以内であればウイルスの増殖を抑える薬を使用することにより、発熱などの症状のある期間を短かくして重症化する割合を低くする効果が期待できます。

 インフルエンザワクチン接種でも完全にインフルエンザに罹患することを防ぐことはできませんが、罹患する可能性を低くし、重症化する可能性を低くすることが期待できます。65歳以上の高齢者や様々な合併症を有してインフルエンザに罹ると重症化する危険性があり、年に1回のワクチン接種が推奨されます。

 

・肺炎

 様々な細菌やウィルスなどが病原体となりえます。検査をしても原因菌が判明しないことが多いです。症状はかぜ症候群とほぼ同様でそれだけでは区別はできません。

 治療としては、細菌性肺炎では抗菌剤投与が中心となります。軽症であれば外来で治療します。酸素吸入や点滴治療が必要な場合には入院が必要となることもあります。高齢者や合併症を有する患者では重症化することもあり、時には致命的になりえます。2018年のデータでは、肺炎は日本人の死因で5番目に多く、全死亡者の6.9%を占めています。男性では4番目に多い死因となっています。

 肺炎球菌ワクチン接種により、肺炎球菌による肺炎の発症の可能性や重症化する可能性を低くする効果が期待できます。

 

 

 65歳以上の高齢者や様々な合併症を有している人達は、肺炎が重症化する危険性が高く、またインフルエンザと肺炎球菌とが同時に感染を起こすことが、重症化の一つの要因と考えられ、両方のワクチン接種が推奨されます。

 これらを完全に予防することはできませんが、うがいや手洗いの励行、無用な人混みへの外出を避ける、調子が悪いと感じれば早目に受診下さい。

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