呼吸器内科

冬場の呼吸器疾患

2018/12/01

冬季は呼吸器感染症・慢性呼吸器疾患の急性増悪が増える!

冬には、気温が低くなり空気が乾燥し、気管支やのどの粘膜がデリケートになり、ウイルスや細菌などによるかぜ症候群(いわゆる“かぜ”のことです)、インフルエンザ、気管支炎、肺炎といった呼吸器系の感染症が増加します。またこれらによって、元々ある喘息やCOPD、間質性肺炎といった慢性的な呼吸器疾患が急に悪くなること(急性増悪と言います)も増加します。

 これらを100%予防することはできませんが、うがいや手洗いの励行、無用な人混みへの外出を避ける、調子が悪いと感じれば早目に診療所や病院を受診する、といった誰でも知っていることの地道な積み重ねが発症や重症化の予防に重要です。マスクの感染予防に対する効果は限定的ですが、自分が病気になった場合に咳やくしゃみに伴う飛沫の飛散を防ぐ効果があります。

 

 かぜ症候群

 急性の上気道炎症の総称で、いわゆる「かぜ」とほぼ同じ意味です。症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、痰などの呼吸器症状が主ですが、発熱、食欲低下、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛などもよく見られ、時に吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状を伴う場合もあります。ライノウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルスといったウイルスが主な病原体であり、ウイルスには抗菌剤は無効なので、治療としては安静や対症療法(症状を抑えることを目的とする治療)が中心となります。多くは1週間程で症状はほぼ消失しますが、咳がかなり長引くことがあります。また、抵抗力の落ちた状態の患者ではかぜ症候群をきっかけに全身状態が悪化する危険性があります。

 

 インフルエンザ

 インフルエンザウイルスが原因であり、症状はかぜ症候群と同様ですが、高熱や関節痛などの全身症状をきたすことが多く、高齢者や基礎疾患のある患者では重症化することがあります。治療としては、安静、対症療法以外に、発症後48時間以内であればウイルスの増殖を抑える薬(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ、ゾフルーザ)を使用することにより、発熱などの症状のある期間を短かくして重症化する割合を低くする効果が期待できます。

 インフルエンザワクチン接種でも完全にインフルエンザに罹患することを防ぐことはできませんが、罹患する可能性を低くし、重症化する可能性を低くすることが期待できます。65歳以上の高齢者や様々な合併症を有してインフルエンザに罹ると重症化する危険性が高い人達やそのような方々と接触する機会が多い人達には年に1回のワクチン接種が推奨されます。

 

 肺炎

 様々な細菌やウイルスなどが病原体となりえます。肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマが原因菌の中では多いですが、血液、尿、喀痰検査をしても原因菌が判明しないことが多いです。症状はかぜ症候群とほぼ同様でそれだけでは区別はできません。

 治療としては、細菌性肺炎では抗菌剤投与が中心となります。軽症であれば外来で治療します。酸素吸入や点滴治療が必要な場合には入院が必要となることもあります。高齢者や合併症を有する患者では重症化することもあり、時には致命的になりえます。2017年のデータでは、肺炎は日本人の死因で5番目に多く、7.2%を占めています。男性では4番目に多い死因となっています。

 高齢者の場合、入院をきっかけに筋力が低下して足腰が立たなくなったり、認知症症状が出現増悪することもあり、肺炎は治っても元の日常生活に戻れず、介護を必要となる場合も少なくなく、入院期間をできる限り短くして早期からリハビリテーションを依頼するようにしています。

 細菌性肺炎でもっとも頻度の高い起炎菌は肺炎球菌であり、肺炎球菌ワクチン接種により、肺炎球菌による肺炎の発症の可能性や重症化する可能性を低くする効果が期待できます。65歳以上の高齢者や様々な合併症を有している人達は、肺炎が重症化する危険性が高く、またインフルエンザと肺炎球菌とが同時に感染を起こすとが重症化の一つの要因と考えられ、両方のワクチン接種が推奨されます。高齢者肺炎球菌ワクチンは2014年10月から5歳刻みで定期接種となっています。

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